2025年上半期（1～6月）の全国繊維業者の倒産（負債1000万円以上＝整理・内整理含む）は173件で、前年同期比11件（6.8％）増加した。負債額は453億2400万円で、前年同期比75億7300万円（20.1％）増加した。
　負債額50億円を超える大型倒産は㈱ロイヤル（名古屋市中区、スポーツ用品小売、93億6800万円）の1社（2022～2024年はゼロ）、同10億円以上は井上通商㈱（福岡市中央区、各種商品卸、負債額43億円）、鈴憲毛織㈱（愛知県一宮市、婦人服地製造、負債額23億1300万円）、㈱稲心（福岡県久留米市、寝具ほか卸、負債額20億円）ほか3社。
　大型倒産の㈱ロイヤルは中部地区ではスポーツ用品の並行輸入の草分け的存在で、スポーツ・カジュアルシューズ主体に扱い、多店舗を展開。「ナイキ」ブランドが爆発的にヒットした1997/8期には年商178億9602万円を計上していた。
その後はブームの終焉もあって減収・赤字決算が続き、近年は新規出店や大型量販店への販売強化、コロナ禍ではネット通販が好調で売上は回復基調であったが、過剰債務を抱えて支払利息が収益を圧迫。2024/8期は売上が大きく落ち込み、今期に入っても業況は回復せず、資金繰りも限界に達し、自力再建を断念した。
　他に注目を集めた倒産は井上通商㈱で、不透明な取引の存在が取り沙汰されるなど動向が注視されていた中、売買代金未払いで訴訟を提起され（訴訟は後に和解成立）、2022/1期には売上も51億6105万円まで大幅に落ち込み、赤字に転落。多額の金融債務を抱え、中小企業活性化協議会に支援を仰ぎ再建に努めていたが、事業継続を断念した。
　また、「イーザッカマニアストアーズ」の店名でネット通販として著名であった㈲ズーティー（神戸市中央区）、おなじくネット通販で業容を拡大していた㈱ブリックス（北海道旭川市）が破たん。両社とも借入依存度の高い経営で余裕のない資金繰りが続き、アフターコロナにおいても仕入価格の上昇などで苦しんでいた。コロナ禍にネット通販へ進出した中小・零細企業は多く、同業者間の競合が激化、輸入製品の扱いが多いことから円安や物流コスト増が収益を圧迫して業績不振に陥っている先もあり、今後同業種は倒産が多発する可能性もある。
　上半期は1月日銀が政策金利の引上げを決定、これに伴い国内銀行の新規貸出の平均金利も上昇、トランプ大統領の関税政策により国内外の経済に大きな影響を与え不安定な状況が続いた。また、インバウンドは引き続き堅調ながら円高が進み免税商品の販売が落ち込んだことで、これまで好調であった百貨店の売上が前年比マイナスに転じた。食料品や相次ぐ生活必需品の値上げ、コメの高騰などによりスーパーなどは増収となっているが、物価高で消費マインドは弱含んでいる。
　企業においても原材料・物流、人件費を含むコスト増は改善されておらず、繊維業界では染色工場などを中心に廃業を決断する企業も増加、メーカーにとって更に国内生産が難しくなると見られる。
　今後も過去の事業資金・設備投資に伴う借入負担の重い先を中心に倒産が増加することが予想され、楽観視できる状況ではない。
　業種別では、「小売商」62件が全体の35.8％を占め、次いで「紳士・婦人・子供・被服製造卸」35件（20.2％）、「その他」25件（14.5％）、3業種で122件、全体の70.5％を占める。以下「ニット製品・洋品雑貨製造卸」24件（13.9％）、「織物製造」7件、「織物卸」「寝具・インテリア製品製造卸」各6件、「染色整理・特殊加工」4件、「糸および原料商」「呉服・和装製品製造卸」各2件。
　原因別では、「業績ジリ貧」156件、「業況急変」14件、「資金力薄弱」2件、「貸し倒れ損失」1件。