2023年（令和5年）3月全国繊維業者の倒産（負債額1000万円以上＝整理・内整理含む）は41件で、前月比16件（64.0％）増加、前年同月比では21件（105.0％）増加。件数が40件を超えたのはコロナ禍前2019年（元年）7月の45件以来となった。
　負債総額は123億5900万円で、前月比66億8900万円（118.0％）増加、前年同月比69億9500万円（130.4％）増加。負債総額が100億円を超えるのは、㈱レナウン（東京都江東区、婦人服ほか製造、負債額138億9200万円）の破たんが負債総額を底上げした2020年（2年）5月の202億8200万円以来となった。
　負債額10億円超の大型倒産はアッシュ・ぺー・フランス㈱（東京都港区、服飾雑貨ほか小売、負債額29億円）、フジライトカーペット㈱（東京都足立区、カーペット卸、負債額13億6500万円）の2件、同5億円以上は㈱てまりや（栃木県足利市、婦人服・洋品小売、負債額9億円）、㈱フレサクト（岐阜市、婦人服製造、負債額8億9600万円）ほか5件。また、負債額1億円以上の倒産が19件発生しており、同1億円未満の少額倒産が大半を占めていたこれまでとは異なり、コロナ禍前の水準に戻る気配が窺われるようになった。
　アッシュ・ぺー・フランス㈱はヨーロッパ製の服飾雑貨、婦人服などのインポートブランドを扱い、百貨店や路面店に多店舗展開して2013／2期は年商110億円超を計上したが、以降は減収基調を辿り、赤字決算を散発。2017年に事業再生ＡＤＲを実施して金融機関から債権放棄を受け投資ファンドが運営する投資組合をスポンサーとして再編に取り組んだが、円安の影響などから再建が遅れ、会社更生法を申請した。
　フジライトカーペット㈱は、イランやパキスタン産の中高級ゾーンの絨毯を主力とし、大手百貨店に販路を構築して2007／2期は年商45億円を計上した。しかし、以降は赤字決算を散発するなど業況が悪化。2020年6月中小企業再生支援協議会に支援を要請して再建を目指したが、3月29日同協議会からの支援が打ち切られ、事業系継続を断念した。
　経済産業省が3月31日に発表した2月の商業販売額は24カ月連続で増加。中でも衣料品は百貨店、スーパーとも好調を維持しており、訪日外国人の増加などを背景に今後も売上増が期待できるとみられている。また、これに呼応するように、上場繊維企業の中には今2月、3月決算予想を上方修正する先もある。しかし、多くの中小・零細企業はその恩恵を受けるまでには至らず、円安や各種コスト増の対応に苦慮しているのが実情で、後継者難などから廃業を選択する先、官報では解散公告も増えている。前述のとおり、倒産動向はコロナ禍前の水準に戻りつつあり、各種コロナ政策により「先送り」された倒産案件が多発することも考えられる。
　業種別では「小売商」15件、「紳士・婦人・子供服・被服製造卸」8件、「ニット製品・洋品雑貨製造卸」6件、「染色整理・特殊加工」「呉服・和装製品」各3件、「織物製造」「寝具・インテリア」「その他」各2件。
　原因別では、「業績ジリ貧」39件で95％を占め、「業況急変」2件。