2023年（令和5年）5月全国繊維業者の倒産（負債額1000万円以上＝整理・内整理含む）は20件で、前月比4件（16.7％）減少、前年同月比では3件（17.6％）増加した。
負債総額は79億2900万円で、前月比32億7100万円（70.2％）増、前年同月比では57億6900万円（267.1％）の大幅増となった。
　負債額10億円超の大型倒産はオーサム㈱（東京都渋谷区、日用品雑貨小売、負債額45億9200万円）1件、同5億円以上も㈱クロダン・デポ（東京都多摩市、負債額6億円）1件のみだったが、オーサム㈱が負債総額の約60％を占め、同社1社が底上げする形となった。
　オーサム㈱はインテリア雑貨、ホームウェア、化粧品など多岐にわたる商品構成で全国のショッピングモールや駅ビルに数十店舗を展開。ピーク時の2019／6期は年商55億円を計上していたが、2020／6期は45億9600万円まで下落。多額の借入金負担が重荷となり、金融機関からリスケを受けるなど厳しい経営が続く中、スポンサー企業による経営再建を模索したものの難航し、店舗の一部を別会社に譲渡して事業継続を断念した。
当月破たんしたいずみ染工㈱（新潟県長岡市、染色、負債額4億円）は、紺藤整染㈱（新潟県長岡市）の泉工場原糸染色部門としてスタート。しかし、業績不振の同社ともども2002年8月に民事再生法を申請（紺藤整染は破産に移行）。その後既存の染色業に加え、化粧品用パウダーの製造を手がけ事業を継続していたが、赤字期が続き、厳しい経営を余儀なくされていた。更にコロナ禍で減収基調となり、コスト高により赤字体質からも脱却できず、再度の破たんとなった。
工場はじめ生産現場の一部は活況で、コロナ前の生産量に回復しつつあり、値上げ交渉により加工賃も上昇している。しかし、原油、諸物価高騰を背景にコストが高止まりして値上げ効果が薄れ、抜本的な収益改善には至っていない。また、中小・零細企業の多くはコスト高を吸収するだけの値上げは叶わず、受注内容の精査ほか自助努力により赤字を回避、または縮小することが精一杯という実情が窺われる。
繊維倒産は今年1、2月、件数・負債額とも増える傾向を示し、3月は「40件、100億円超」の高水準となった。4月以降も各種コロナ融資の恩恵で「先送り」されていた倒産案件が多発するとみられたが、4～5月の件数は低い水準だった。
しかし、売上縮小により資金需要が抑制され、さらにゼロゼロ融資の借換えにより倒産が顕在化していないに過ぎず、引き続き予断を許さない状況にある。
業種別では「小売商」9件、「織物製造」「紳士・婦人・子供服・被服製造卸」各3件、「染色整理・特殊加工」2件、「織物卸」「ニット製品・洋品雑貨製造卸」「寝具・インテリア」各1件。
原因別では、「業績ジリ貧」19件（95％）、資金力薄弱1件だった。